Concepts

概念から探す

身体論を読み解くための20の概念。「哲学的概念」と「実証研究として確立した知見」「まだ論争中の主張」を混ぜないために、 それぞれの現在の位置づけを明示している。

哲学的概念

実証というより、問いの立て方を与える概念

前4世紀哲学的概念

質料形相論

Hylomorphism

あらゆる自然物を質料(素材)と形相(それを何であるかたらしめるもの)の複合とみなす枠組み。生き物においては身体が質料であり、魂が形相である。心身問題が「二実体の関係」になる前の、もう一つの選択肢。

前2世紀〜哲学的概念

心身一如

Mind-Body Oneness

心と身体を二つの独立した存在としては立てない東洋の思想的枠組み。しかもその統一は前提ではなく、修行や養生の実践を通じて到達される状態として捉えられる。

1641哲学的概念

心身二元論

Mind-Body Dualism

心と身体を、互いに独立した別種の存在とみなす立場。身体は物理法則で説明され、心はその外側に置かれる。近代以降の身体論のほとんどは、この分割への応答として書かれている。

1677哲学的概念

アフェクト/情動

Affect

身体の活動能力が、他のものとの出会いによって増減する変化そのもの。感情を心の内的状態としてではなく、身体と環境の関係の変化として捉える語彙。

1890哲学的概念

習慣

Habit

繰り返しによって身体に沈殿し、意識の介入なしに働くようになった構え。単なる機械的反復ではなく、状況に応じて次の行為の可能性を先取りする身体の知である。

1912哲学的概念

生きられた身体

Lived Body

物体としての身体(Körper)に対し、そこから世界が現れてくる「ここ」としての身体。観察される対象ではなく、あらゆる知覚の出発点であり、世界へ向かう構えそのものである。

1945哲学的概念

運動志向性

Motor Intentionality

表象を介さずに、身体がすでに世界へ差し向けられている在り方。ドアノブに手を伸ばすとき、私たちは関節角度を決めていない。ただドアノブへ向かっている。

1972哲学的概念

オートポイエーシス

Autopoiesis

自らの構成要素を自ら産出し続けることで、自己の境界を維持するシステム。細胞がその典型で、代謝が膜を作り、膜が代謝を可能にする循環をなす。生命と認知を連続させる枠組みの基礎。

1975哲学的概念

社会的身体

The Social Body

身体の使い方・作法・姿勢が、個人の癖ではなく社会集団ごとに学習されたものであり、制度によって訓練され規範化されるという視点。身体は自然の与件ではなく、歴史的に作られている。

1991哲学的概念

エナクティヴィズム

Enactivism

認知を、あらかじめ与えられた世界を内部に写し取ることではなく、身体を持つ生物が環境と関わる歴史のなかで世界と自己が同時に立ち上がる過程として捉える立場。

1998哲学的概念

拡張された心

The Extended Mind

認知の境界は頭蓋骨や皮膚で終わるのか、という問い。ノート・道具・環境の目印が、内部の資源と同じ機能的役割を果たすなら、それらも認知プロセスの一部ではないかとする主張。