一言でいうと

蝋と、蝋に刻まれた印章の形は、二つの物だろうか。アリストテレスの答えは「そう問うべきではない」である。同じように、魂と身体も二つの物ではない。

哲学での意味

魂は身体のなかに宿る何かではなく、身体が生きて働いていることの秩序そのものである。『魂について』は魂を、生命を可能性として持つ自然的有機体の第一現実態(エンテレケイア)と定義する。

魂は階層をなす。栄養と生殖(植物)、感覚と運動(動物)、思考(人間)。上位は下位を含み込む。つまり人間の思考も、生きて栄養を摂り、感じ、動く身体の能力の延長線上にある。

なぜいま参照されるのか

この枠組みは、心身問題を「二つの実体をどう繋ぐか」という形で立てない。心は身体に外から関係するのではなく、身体の働きの形式である。近代がこの枠組みを捨てたところに、デカルト以降の心身問題が生まれた。

20世紀後半以降、生命と認知の連続性を主張するエナクティヴィズムや、生物学の哲学における目的論の再評価のなかで、質料形相論はしばしば呼び出される。

ただし、これらの現代的議論の多くはアリストテレスの直接の継承ではなく、似た問題設定への回帰である。両者を区別して読む必要がある。