身体論としての読みどころ

心身問題が「二つの実体をどう繋ぐか」という形をとる前の、もう一つの選択肢がここにある。魂は身体のなかに宿る何かではなく、身体が生きて働いていることの秩序そのものである。

現代の生物学の哲学、エナクティヴィズム、生態心理学は、しばしばこのテキストに立ち返る。ただしその多くは直接の継承ではなく、似た問題設定への回帰である点に注意したい。

身体論として重要な箇所

  • 魂を「生命を可能性として持つ自然的有機体の第一現実態」と定義する箇所(第二巻第一章 412a–b)。
  • 蝋と印章の比喩により、魂と身体が同一かを問う必要がないと述べる箇所。
  • 感覚を、感覚されるものの形相を質料なしに受け取ることとして説明する箇所(第二巻第十二章)。

読むべき章

  • 第二巻第一〜二章:魂の定義。ここだけでも身体論としての核心が読める。
  • 第三巻第九〜十一章:欲求と運動の関係。

日本語訳

  • 魂について / 中畑正志訳 / 京都大学学術出版会 / 2001
  • 心とは何か / 桑子敏雄訳 / 講談社学術文庫