身体論としての読みどころ
身体論を一冊だけ読むならこれ、と言われることの多い本である。ただし読みやすくはない。当時の心理学・神経学の症例研究を大量に参照しながら議論が進むため、症例の記述を追いながら読むと理解しやすい。
デカルト以降の二分法——主体としての心と、対象としての身体——を、身体そのものにおいて架橋する。身体は物体でありながら主体であり、対象でありながら経験の場である。この曖昧さは、解決すべき混乱ではなく、身体の存在様態そのものだとされる。
身体論として重要な箇所
- シュナイダー症例の分析。命令されて腕を上げられないが、蚊は叩ける。抽象的運動と具体的運動の分離。
- 杖に慣れた盲人の分析。触覚の場所が杖の先端へ移動する。道具の身体化。
- オルガン奏者が初めて触れる楽器の前で鍵盤の配置を「身体で測る」場面。習慣とは身体図式が新しい可能性を獲得すること。
- 幻影肢(幻肢)の分析。身体図式が失われた四肢を保持し続ける。
読むべき章
- 序論と第一部(身体)が中心。第一部第三章「固有の身体の空間性と運動性」が身体図式論の核。
日本語訳
- 知覚の現象学 / 中島盛夫訳 / 法政大学出版局 / 1974(改訳新装版2009/改装版2015)
- 知覚の現象学 1・2 / 竹内芳郎・小木貞孝ほか訳 / みすず書房 / 1967/1974