身体論としての読みどころ

エヴァン・トンプソン、エレノア・ロッシュとの共著。身体化認知という潮流の理論的な骨格を与えた書である。

批判したのは、認知科学の標準的な前提——外にあらかじめ世界があり、生物はその表象を内部に構築し、それに基づいて行為する、という図式である。彼らの主張は、生物は自己維持という関心を持ち、その関心に照らして環境の特徴が意味を持つ、というものだった。

2016年には改訂版(revised edition)が刊行されており、その後25年の展開を踏まえた序文が加えられている。

身体論として重要な箇所

  • enaction(行為による産出)の定義。世界は認知の前にあるのではなく、認知とともに立ち上がる。
  • 色覚の議論。色が世界にも脳にもなく、生物と環境の歴史のなかで成立することを示す事例。
  • 中観・唯識の議論を、固定した自己という前提を手放す方法論として導入する部分。

読むべき章

  • 第一部と第八〜十章(enaction の定式化)が中心。

日本語訳

  • 身体化された心——仏教思想からのエナクティブ・アプローチ / 田中靖夫訳 / 工作舎 / 2001