身体論としての読みどころ
「身体なしに合理性はない」という主張は、認知科学における身体化の議論に強い後押しを与えた。またウィリアム・ジェームズの末梢起源説を、神経解剖学の言葉で復活させた点でも重要である。
ただし読む際には注意が必要である。ソマティック・マーカー仮説は確立した知見ではない。ダンらの批判的検討(2006)は、主要な実証的根拠であるアイオワ・ギャンブリング課題の解釈に複数の問題があることを指摘している。
また書名が示唆する「デカルト批判」は、デカルト自身のテキストというより、後世に単純化された像に向けられているという指摘もある。
身体論として重要な箇所
- フィネアス・ゲージの症例(鉄棒が前頭葉を貫通した後の人格変化)から始まる構成。
- 前頭前野腹内側部損傷患者が、知能は保たれているのに生活上の意思決定に失敗する事例。
- アイオワ・ギャンブリング課題における皮膚電位反応の議論。
日本語訳
- デカルトの誤り——情動、理性、人間の脳 / 田中三彦訳 / ちくま学芸文庫 / 2010(講談社『生存する脳』(2000)の改題改訳)