身体論としての読みどころ
運動を「脳が筋肉に命令を出す」という一方向の図式から解放した。運動は、神経系・身体の力学・環境の相互作用から創発するものとして扱われる。
実務的な含意も明確である。運動学習は同じ動作の反復ではなく、変動性を含む練習によって促される。環境や課題の制約を操作することが、言語による直接指示より有効な場合がある。制約誘発運動療法やタスク指向型アプローチは、この系譜のうえに立つ。
身体論として重要な箇所
- 「繰り返しのない繰り返し」——熟練とは同じ動きの再生ではなく、同じ結果を毎回異なる仕方で達成できること。
- 鍛冶職人のハンマー動作の連続写真分析。先端は同じ点に当たるが、関節軌道は毎回異なる。
- 自由度問題の定式化:制御すべき変数の数が、制御信号として扱える数をはるかに超えている。