身体論としての読みどころ
この本はほとんど身体を主題にしない。ハイデガー自身、後年これを自らの仕事の不十分な点として認めている。それでも身体論に決定的な影響を与えたのは、行為の分析を通じてである。
世界との関わりの基本形は、認識ではなく配慮的な使用である。人間はまず世界を眺めてから行為するのではない。すでに行為のただ中にいる。メルロ=ポンティは、この構造を身体において語り直した。
なおハイデガーの政治的関与——ナチ党への入党と学長就任——は、彼の思想の受容に消えない影を落としている。読む際にはこの事実を切り離さずに扱う必要がある。
身体論として重要な箇所
- ハンマーの分析。使っているときハンマーは透明であり(手許存在)、壊れたときに初めて対象として現れる(目前存在)。
- 理論的な観察は、実践的な関わりが破れたところに二次的に現れるという順序の転倒。
読むべき章
- 第一部第一篇第三章(世界の世界性)が道具の分析。身体論として最も参照される部分。
日本語訳
- 存在と時間 / 岩波文庫、ちくま学芸文庫、作品社など複数